後継者が決まっても、承継は終わらない
◆ 「後継者が決まったから一安心」…本当にそうでしょうか?
「息子が会社を継ぐことになった。」
「役員への引き継ぎも始めている。」
「取引先への挨拶も済ませた。」
こうした話を伺うと、多くの経営者は「事業承継がひと段落した」と感じるかもしれません。
もちろん、後継者が決まり、引き継ぎが始まることは大きな前進です。
しかし、事業承継は「後継者を決めること」がゴールではありません。
本当に大切なのは、後継者が経営しやすい環境を整えて引き継ぐことです。
その視点で考えると、企業不動産(CRE)も重要な経営資源の一つになります。
◆ 引き継ぐのは「会社」だけではない
事業承継では、
- 経営理念
- 技術やノウハウ
- 顧客との信頼関係
- 社員との関係性
など、多くのものが引き継がれます。
一方で、見落とされがちなのが、工場や倉庫、社屋、土地といった企業不動産です。
長年事業を続けてきた企業ほど、
「この倉庫は昔の製品を保管していた場所。」
「この建物は増築を重ねて今の形になった。」
といった歴史があります。
その歴史は会社の財産でもありますが、同時に、今の事業に合っているかを考えることも必要です。
◆ 「昔からこうしてきた」が引き継がれていませんか?
地域企業では、
「このレイアウトは創業当時から変えていない。」
「使っていない建物だけれど、そのまま残してある。」
「設備を置く場所は、なんとなく決まっている。」
そんな光景も珍しくありません。
それ自体が悪いわけではありません。
ただ、後継者にとっては、
「なぜこの配置なのか。」
「本当に必要なのか。」
と疑問に感じることもあるでしょう。
事業環境や人員体制が変化している中で、「昔から」の積み重ねが、経営の負担になっているケースもあります。
承継のタイミングは、そうした”当たり前”を見直す良い機会でもあるのです。
◆ 不動産は「資産」であると同時に「経営資源」
企業不動産というと、土地や建物の資産価値に目が向きがちです。
もちろん、それも大切です。
しかし、経営の視点では、
- 生産しやすい工場か
- 働きやすい社屋か
- 活用されている倉庫か
- 将来の事業に合った拠点か
という見方も欠かせません。
前回の記事「物流費が上がる時代の拠点戦略」でもご紹介したように、拠点の配置や役割は、物流や生産性にも影響します。
また、「空きスペースを“コスト”のままにしない」で取り上げたように、使われていない場所も、見方を変えれば経営資源になる可能性があります。
承継とは、「資産を渡すこと」ではなく、「活かせる状態で渡すこと」でもあるのです。
◆ 後継者が困らない会社にするために
事業承継後、新しい経営者はさまざまな判断を求められます。
設備投資をどうするか。
採用をどう進めるか。
新しい事業に挑戦するか。
そのとき、企業不動産が整理されていれば、選択肢は広がります。
一方で、
「どの建物が使われているのかわからない。」
「遊休資産が多く、管理コストがかかっている。」
「拠点の役割が曖昧。」
という状態では、経営判断が難しくなることもあります。
後継者が困らない会社をつくることも、現経営者ができる大切な準備の一つではないでしょうか。
◆ 承継は「未来」を引き継ぐこと
事業承継というと、「今あるものを引き継ぐ」というイメージがあります。
しかし、本当に引き継ぎたいのは、会社の未来です。
そのためには、
「残すもの」
「見直すもの」
を整理することも必要です。
企業不動産も、その一つです。
工場、倉庫、社屋、土地。
どれも会社の歩みを支えてきた大切な資産です。
だからこそ、次の世代が活かしやすい形で引き継ぐことが、これからの事業承継には求められています。
後継者が決まったその日から、本当の承継は始まるのかもしれません。
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飯塚甲生 <26年の実績 × 中小企業診断士の専門知識>
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