経営計画を作っただけで、会社は変わるのか?

経営計画は「作ること」がゴールではない

「今年の経営計画を作った。」

「3年後の売上目標も決めた。」

「設備投資の計画も立てた。」

経営者として、会社の将来を考えて計画を作ることは、とても大切です。

実際、2025年版中小企業白書では、経営計画の策定によって「経営状況の把握」や「自社の強み・弱みの理解」、「業績の向上」などにつながったとする事業者が確認されています。

一方で、ここで考えたいのが、

「その計画を作ったあと、会社はどう変わりましたか?」

ということです。

計画書が完成した。

経営会議で共有した。

金融機関にも説明した。

そこで終わってしまっては、せっかく作った計画が「きれいな資料」のままになってしまうかもしれません。

経営計画は、未来を予測するためだけのものではありません。

これから会社をどう動かすのかを決め、その結果を確認し、次の判断につなげるためのものでもあります。

「計画はあるのに、現場は何も変わらない」

前回の記事「人を増やす前に、減らせる仕事はありませんか?」では、人手不足への対応として、まず現在の仕事を見直し、やめられる仕事・まとめられる仕事・自動化できる仕事を考えることについて紹介しました。

こうした改善も、実は経営計画と切り離して考える必要はありません。経営計画で掲げた「生産性向上」や「人手不足への対応」を、実際の業務にどう落とし込むのか。今回は、その「計画を実行するところ」に焦点を当てます。

製造業の現場では、こんなこともあるのではないでしょうか。

「3年後には売上を1.5倍にする」

「生産性を20%向上させる」

「新しい設備を導入する」

「新規顧客を開拓する」

経営計画には、こうした目標が並んでいます。

ところが、数か月経って現場を見ると、

  • 以前と同じ工程で仕事をしている
  • 設備投資の検討が止まっている
  • 新規顧客への営業活動が進んでいない
  • 人員配置が以前と変わっていない
  • 忙しさだけが増えている

ということがあります。

これは、経営計画が間違っているとは限りません。

「計画」と「日々の仕事」の間に、まだ距離があるのかもしれません。

目標を「行動」に変える

例えば、

「生産性を20%向上させる」

という目標を掲げたとします。

これだけでは、現場の人にとっては「具体的に何をすればいいのか」が分かりません。

そこで、

「どの工程の生産性を上げるのか」

「現在、どこに時間がかかっているのか」

「設備を変える必要があるのか」

「人員配置を変えるのか」

「作業工程を見直すのか」

「そもそも不要な作業はないのか」

と、一つずつ具体化していきます。

そして、

誰が、いつまでに、何をするのか

まで落とし込んで初めて、経営計画が日々の経営に近づいていきます。

経営計画に必要なのは「数字」だけではない

経営計画というと、売上や利益、設備投資額などの数字を思い浮かべるかもしれません。

もちろん、数字は重要です。

しかし、数字だけでは会社は動きません。

例えば、

「売上10億円を目指す」

という目標があったとします。

そのためには、

  • どの商品を伸ばすのか
  • どの顧客を増やすのか
  • 生産能力は足りるのか
  • 人は足りるのか
  • 設備投資は必要か
  • 工場のスペースは足りるのか
  • 運転資金は確保できるのか

といった問題も考える必要があります。

つまり、経営計画は売上目標を決めるだけではなく、その目標を実現するために会社の何を変えるのかを考えるものでもあります。

「設備投資をする」と書いて終わっていませんか?

例えば、経営計画に、

「生産能力向上のため、新設備を導入する」

と書かれていたとします。

では、その設備を入れれば本当に生産能力は上がるのでしょうか。

設備の前後にある工程に時間がかかっていれば、工場全体の生産量は思ったほど増えないかもしれません。

設備を動かすために新たな人員が必要になる可能性もあります。

設置場所によっては、材料や製品を運ぶ動線が悪くなることもあります。

また、設備投資によって売上が増えても、借入返済や追加の運転資金が負担になれば、会社全体としては思ったような成果につながらないこともあります。

だからこそ、経営計画に「設備投資」と書くだけではなく、

その投資によって会社の何が変わるのか

まで考える必要があります。

以前の記事「その設備投資、本当に利益につながっていますか?」でも触れたように、設備単体ではなく、工程・人・動線・稼働率などを含めて考えることが重要です。

計画と実績の「ズレ」を見る

経営計画を実行していくうえで、もう一つ重要なのが、

計画と実績の比較です。

計画どおりにいかなかった時、

重要なのは、「なぜ計画とズレたのか?」

を考えることです。

売上が足りなかったのは、営業活動の問題なのか。

生産量が足りなかったのは、設備の問題なのか。

残業が増えたのは、人手不足なのか。

設備稼働率が低いのは、受注量の問題なのか。

原因が分かれば、次の打ち手も変わります。

計画は「修正してはいけないもの」ではない

一度作った経営計画を、絶対に変えてはいけないと思っていないでしょうか。

経営環境は変化します。

・原材料価格が変わる。

・人材が採用できない。

・大口顧客の受注が減る。

・逆に、新しい受注が急に増える。

・設備投資の価格が上がる。

こうした変化がある中で、最初に作った計画に無理に合わせ続ける必要はありません。

大切なのは、

計画を守ることではなく、計画を使って経営を考え続けること。

2025年版中小企業白書でも、経営計画について「計画の達成に向けた行動」だけでなく、「進捗管理」や「実績の評価・計画の見直し」まで含めた運用が重要とされています。

経営計画を「経営会議の資料」で終わらせない

経営計画を実際の経営に使うためには、定期的に確認することが大切です。

例えば、毎月あるいは四半期ごとに、

①計画

何を実現するのか。

②実行

誰が、何をしたのか。

③確認

計画と実績にどんな差があるのか。

④原因分析

なぜ差が生まれたのか。

⑤改善

次に何を変えるのか。

という流れで確認します。

いわゆるPDCAという言葉を使わなくても、

「計画して、動いて、確認して、変える」

というサイクルを会社の中に持つことが重要です。

経営者だけで抱え込まない

経営計画を作ることも、運用することも、経営者一人ですべてを担う必要はありません。

売上や利益だけでなく、

  • 生産
  • 営業
  • 人材
  • 設備
  • 財務
  • 不動産

など、それぞれの担当者が関わることで、計画と現場の距離を縮められる場合があります。

例えば、設備投資について経営者だけで考えるのではなく、現場の担当者から、

「この工程に時間がかかっている」

「この設備は使いにくい」

「実際にはこちらの作業のほうが負担になっている」

といった情報を集める。

すると、経営計画には見えていなかった課題が見つかることがあります。

「計画を作る」から「会社を動かす」へ

経営計画は、それ自体が会社を変えてくれるものではありません。

しかし、

何を変えるのかを明確にする。

誰が動くのかを決める。

実績を確認する。

必要なら計画を変える。

こうした使い方をすれば、経営計画は会社を動かすための道具になります。

2025年版中小企業白書でも、経営計画の策定・実行を含む戦略的な経営が業績向上などに重要であることが示される一方、計画は策定後も継続的に見直していくことが重要とされています。

まずは「計画と現場のズレ」を探してみる

もし会社に経営計画があるなら、一度こんな質問をしてみてはいかがでしょうか。

「この計画によって、今年会社の何が変わるのだろう?」

そして、

「そのために、今月誰が何をするのだろう?」

と考えてみる。

もし答えが曖昧なら、計画そのものが悪いのではなく、計画を実行するための具体的な工程がまだ整理されていないのかもしれません。

経営計画は、完成した瞬間がスタートです。

計画を、実際の経営につなげるために。

経営計画を作ることは、会社の将来を考える大切な機会です。

しかし、本当に重要なのは、その計画をもとに会社が動き、実績を確認し、必要に応じて次の判断につなげていくことです

クレッシェンドアソシエイツでは、経営計画の策定だけでなく、課題の整理、優先順位の設定、実行計画の策定、関係者との調整、実行後の検証まで、経営の実行を伴走します。

設備投資、事業拡大、拠点・不動産、人材、財務など、一つのテーマだけでは判断できない経営課題も、会社全体を見ながら整理します。

「計画はある。でも、次に何をすればいいのかわからない」

そんなときは、計画を見直すところから始めてみてはいかがでしょうか。

飯塚甲生 <26年の実績 × 中小企業診断士の専門知識>

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